『Dragon's earth』


ニライカナイ、というべきか。その世界の常識では、海の果てには異界に通じる道があるとされた。死者とリュウ族のみが知る常世への坂道、遥かな古より、数多の人間がこの永遠への道を探して海原へ旅立った。


人間は船を操り、長い年月を掛けて世界の確たる姿を掴んだ。空に浮かぶ月の様な球体、つまり星の上に生かされている事を知ってしまったのだ。ならば、探し求めた「海の果て」は幻であったのか。ならば、リュウ族の言う彼方の地は彼等の偽りなのか──


こうして多くの人間は、海の果ての世界を忘れてしまった。やがて時が経ち、巨大な船は、専ら武器を水面に浮かべる時代が訪れた。同じ人間を脅かす為、あるいは生ける物の強者リュウ族を脅かす為、その小さな惑星に囚われた人々は、互いに牙を剥き戦い合った。


かつて東の果てと云われた島国には、「タツノマレツチ」という民話が語り継がれていた。剣に盾に変幻自在、鏡を鋳れば、今は亡き者の姿が映るという伝説上の物質。それまで夢物語の一に過ぎなかった竜希土は、火紀4016年、現実に存在する事が明らかとなった。


人物


勝栗与一 かつくりよいち


ヒノモト海軍の若年中佐。青龍の血を引くとされる家の出で、一族に伝わる呪(まじな)いの使い手。ヒノモトの北辺、最後(モシリ)の軍港整備に携わっていたが、父・勝栗鷲一郎中将の遭難を機に、南方タシラカ群島に赴く事になる。獣脚の大蜥蜴・サタケを連れる。好物はバナナ。





鳥羽鉄道 とばとしみち


海軍大尉。気さくで小柄な飛行機乗り。庁舎の基礎工事の際に出土した精巧な土人形であり、現海軍中将・塩椎八汰次の養子という体で25年前より戸籍を得ている。元は前線の部隊に配属されていたが、養父塩椎の意向で勝栗の下へ就いた。寝相が悪い。





樋上那陀丸 ひがみなだまる


二飛曹。先輩である鳥羽と同じ、土人形の類でありながら、常世の獣の命(半身)を持つ。前線の気象観測中、リュウ族との接触事故により殉職扱いされたが、その数日後に救助され、勝栗の指揮下に編入された。いささか人見知りだが、馴染みの人間には率直な物言いをする。